Ritchie Blackmore --- interview

"BURRN!" - EXCLUSIVE INTERVIEW WITH BLACKMORE'S NIGHT (PART 1)

by KAZ HIROSE/EDITOR IN CHIEF

ドイツでレコーディングしているリッチー・ブラックモアから取材OKとのメッセージを受け取ったのは3月中旬のことだった。 リッチーとキャンディス・ナイトは、プロデューサーのパット・レーガンと共にミュンヘン郊外の城でBLACKMORE'S NIGHTとして3枚目のアルバムを制作中であり、もし僕がその城まで来るのなら、新曲を聴いたうえでの独占インタビューに応じる、というのである。 勿論、これが今目の作品に関して世界初の取材になるわけで、非常に光栄なことだ。 早速、僕はフランクフルト経由でミュンヘンに飛び、車で彼らの滞在する城を訪ねた。 まずは、パットの部屋(そこにはレコーディング用の様々な機材とコンピュータが所狭しと並んでいた)で新曲を聴く。 「まだ誰にも聴かせていないんだよ」と言いつつ、パットは僕に聴かせるためにラフ・ミックス音源を7曲ほど用意してくれた。素晴らしい。 前作まで以上にリッチーの個性がギター・プレイに顕著に表現されているし、様々な新しい試みがなされていて、それが僕達の愛する “あの世界” をより良く表現するのに大きく貢献している。
新曲に感銘を受けた僕は、リッチー&キャンディスとディナーを共にした後、インタビューを許された。 「カズと話すのはいつでも楽しいよ。 心配ない、何でも訊いてくれ」とのリッチーの言葉で始められたインタビューは、実に3時間を越えるものとなったのである…。

──BLACKMORE'S NIGHTの3rdアルバム「FIRES AT MIDNIGHT」が、もうじき完成というところまできていますが、この作品にはいつ頃から取り組んでいるのですか?
リッチー・ブラックモア(以下R): 私達は、いつも自然に曲を書いている。 今目のCDは、過去18ヵ月間に出た16のアイディアをまとめたものだ。
キャンディス・ナイト(以下C): リッチーが好きなのは、1年レコーディングに集中して、残った時間でプロモーション・ツアー、そして皆に新曲を聴いて貰うためのライヴ・ツアーを少しして、2年目は、前の年に充分に廻れなかった所ヘツアーに行くという形かしら。
R: 最初の2枚…「SHADOW OF THE MOON」と「UNDER A VIOLET MOON」は、随分ハイ・ペースでリリースしたから、今度のアルバムまでには少し時間を置きたかったんだ。 曲は出来ていたが、ツアーをして皆に私達のことを知って貰いたかったし、ステージに出た時に居心地がいいと思える状況を作りたかった。 キャンディスも今では経験豊富だし、バンドのメンバーに間しても、以前は私達が何をやりたいのか判らない人達を引っ張ってきたから出入りが激しかったが、今は良いバンドになったと思う。 過去にバンドに入ってきた多くの人間は私がDEEP PURPLEやRAINBOWをやると思い込んでいたフシがあって、6ヵ月くらい経つと居心地が悪くなったらしい。
私がミュージシャンに求めるのはオーガニック(有機的)であることなんだ。 ただベースを弾いたり、ドラムを叩いたりするんじゃない。 タンバリンも叩けば、ベースもギターも歌も出来なくてはいけない。 ルネッサンス音楽の全体を把握していなくてはならないんだ。 私達は100%ルネッサンス音楽をやってるわけではないけれど、その要素がとても強い。 これは純粋なロック・バンドではないから、人を見つけるのがとても困難だ。 ロック・ミュージシャンは多いが、基本的に私はそういう人達を必要としていないからね。 私達の音楽の20%はロックだが、大半はオーガニックなルネッサンス音楽、つまりネイチャー・ミュージックだ。 だから本当に音楽を理解している人間が必要になる。 ただ大きな音を出して「俺はロックしてるぜ!!」って言いたい人間は必要ない。
私が求めているのは、洗練され、人間として確立されたミュージシャンだね。 18や19の若者ではなく、35歳より上くらいの人達。 そして重要なのは、私達がやろうとしていることを理解してくれるということだ。 私達は500年前の音楽が持っているメッセージを伝えようとしているんだから、服装も自然とそれに相応しいものになる。 ショウのために中世の吟遊楽人の服を着るのではなく、普段からこういう服装をするのが楽しいんだ。 私達は、よくこういう服装をして友達と会ってりしているし、女装バーヘもこの服を着ていく。 (笑)
C: 大抵の場合はそうね。 (笑)
R: それは生き方の問題なんだ。 いつもこういう服装でいるわけではないが、こういう服が好きなんだ。 時々、一緒にプレイしたいというミュージシャンで「タイツなんか履きたくない」っていう奴がいるが、私達のやろうとしていることを理解してないと言わざるを得ない。 これは想像力の問題さ。 私達がやっているのは、古くて、オーガニックで、自然な音楽だ。 土や木や空気から生まれるものなんだよ。コンピュータ的なものではない。 これは、ハイファイともインターネットとも無縁で、むしろ森の中にいるような音楽だ。 だからギターは重要なんだ。木と弦が共鳴するからね。
勿論、私はロックン・ロールも好きだよ。 しかし、30年もロックをやってると、さすがに疲れてくる。 ロックは、あるところで止まったままで、自然の中に見られるようなダイナミズムがない。 木は、風に吹かれて前に屈んだり、後ろに屈んだりして、その間に月が見えたりするだろう? 口ックン・ロールは、いつも大きな音で騒いで「口ックしたいか!?」「イェー!」とか怒鳴って…という感じじゃないか。 それはそれでいいんだけど、今の私は少し離れていたい。

──BLACKMORE'S NIGHTのツアーでの聴衆の反応が、作品に影響を与えた部分はありますか?
R: 「SHADOW OF THE MOON」を作ってツアーを始めた頃はバラード中心に演奏していたが、次第に皆がもう少しアップ・ビートなものを欲しがっていると判ってきた。 だから「UNDER A VIOLET MOON」では少しスパニッシュとか、アップ・テンポなものを取り入れた。 今ではアップ・テンポな曲も、バラードも、選ぶに充分なレパートリーが出来ているが、それらは観客の反応を観察するところから生まれたものだ。 微妙なところなんだよね。 観客にはバラードに興味を持って貰いたいが、一晩中そればかりも出来ないからね。 ショウにはエキサイトメントも必要だ。
C: リッチーは観客の反応によってショウを変えるのが上手なのよ、あと、演奏する場所によってもね。 例えば教会で演奏する場合は、建物の壁と共鳴して素晴らしい効果を生み出す曲をやるし、野外のお城で演奏する場合は音を大きくしたり、密閉されたところでは演奏しないような曲をやったりする。 毎晩、何をやるか判らないから、ファンはまた観たいと思ってくれる。 メンバーさえ、リッチーが何をやるのか知らないの。 だから皆、リッチーのことをよく見てるのよ。 (笑)
R: 極限に生きているという感覚が大事さ。 (笑)私は、バンドのメンバーが曲をやっと覚えた頃に「ストップ! 私がプレイする」って言うのが好きだ。 そうすると皆「えっ!? 何をプレイするの?」って感じになるから、「私が1人でプレイする」と言う。 で、1人で演奏すると皆「何だ、これは!?」っていう状態になる。 奴らの恐怖で引きつった顔が、物凄くおかしいんだ。 (笑) ドラマーはこっちを見て「何を演奏するんだ?」って顔してるし。 RAINBOWでも、ボビー・ロンディネリは、急に私がソロを弾きたくなった時に、彼に向かってこう(首を切るジェスチャー)すると、ちゃんと止まってくれて、私はソロを弾くことが出来た。 そして、また彼に合図を出すと、再びドラムを叩き始めた。 それをリハーサルしたことはないんだけどね。 そういうことによって、鋭い感覚を持ち続けるようになると思うんだ。
しかし、他のミュージシャンの多くは、私が合図を出してもそのままプレイしていた。 ドラマーに向かって「ソロをやるから」って、こう(首を切るジェスチャー)合図を出しても、そのままドンドンドンドンって叩き続けるから、「じゃあ、いいや」って諦めるしかない。 で、後から「ソロをやるなら、リハーサルやらなくちゃ」って言われる。 でも、ソロはリハーサルなんかしないよ。 その時、突然やりたいと思うものだからね。 凄くエキサイトしたり熱中したりしている時にやりたくなるものなんだ。 そういう気分じゃない時はソロはやらない。 だが、ミュージシャンによっては、いつも決まった形式で同じことを繰り返している。 勿論、音楽に対してある程度の計画性は必要だけど、例えば、テーブルを囲んだ時の会話のリハーサルなんてしないだろ? そんなことをしたら会話は物凄くつまらないものになる。 音楽も、それと同じだと私は思うよ。

──ステージでの、首を切るジェスチャーは、ソロをやるから演奏を止めろっていう意味だったんですね。「ちゃんとやらないとクビだぞ」っていうブラック・ジョークかと思ってました。
R: ある意味では当たってるよ。 あのジェスチャーの意味は、私がソロをやりたいから演奏を止めろっていう意味だから、もし演奏を止めなければクビになるからね。 (笑)

──今回、再びパット・レーガンと仕事をするに当たって、ファーストの時のように自宅で録音するのではなく、わざわざドイツに来て、この城でレコーディングすることにしたのは何故ですか?
C: 99%のレコーディングは家で済ませたのよ。 私達の家は私達にとって聖なる場所だから。 現代建築の家を、何年も掛けて中世風の家に変えたの。 だから、家は私達にとって一番クリエイティヴになれる場所で、満足したものが出来るの。 ただ……つい最近リッチーのお父様が亡くなったので、私達はイギリスヘ飛んで行って、お葬式や、いろいろなことがあったのよ。 そんな状況の中で、パットはまだアルバムを完全に終えてなくて、ミキシングも残っていたし、いくつか追加すべきパートもあった。 だから、前から知っていたこのお城に来ることにしたのよ。 数年前、この中の小さなステージでショウをやったことがあって…100人ぐらいのお客さんを相手に、ディナーとドリンク込みでね。それは特別な経験だった。 だから、ここに戻って仕事を終えることにしたの。
R: この城は400年ほど前に建てられたもので、特別な雰囲気がある。 私達の音楽の魂は古いものだから、城はそれを反映する。 城の中にいると家にいるように落ち着けるんだ。 素晴らしいエコーがあって、音にも良い影響があるしね。 それに、城は孤立していて、とても静かだ。 現代世界では静かな場所を見つけるのは難しい。 大抵どこかで音が嗚っている。 でも、静かな城の中にいれば、自分の音楽や自分の人生に対して、深く考えることが出来る。 そして…窓から飛び降りることが出来る。自分を終わりにしたくなるんだ。 (笑)
城の壁は物凄く厚いが、今のアメリカの家の壁は物凄く薄くて、いつも隣の人の音が聞こえてくる。 そして、隣の人は大抵、流行の音楽を掛けている。 アメリカは、小さなカフェに行ったとしても、いつもラジオで掛かっているのと同じものを掛けている。いつも同じ音楽だ。 だが、ここには静けさがある。バス・ドラはない。 バス・ドラの聞こえないところに行くのは物凄く難しいよ。 あの音はアメリカではどこにでもある。 構成の整った、人間に操作された音。 レコード会社が沢山お金を使って誇大宣伝をして盛り上げる音だよ。 アメリカでは皆プレッシャーを感じている。 人は多過ぎるし、競争は激しいし、広告はあり過ぎる。 私は自分をそういう環境から切り離したいんだ。 私は、アメリカは実は月に行ってないんじゃないかと思うんだ。 もし連中が行ってたら、月に広告が出てるはずだよ。 “by SONY” とか。 (笑)

──今回のレコーディングでは「UNDER A VIOLET MOON」の時のようなトラブルは何もなかったわけですね?
C: 今回は大丈夫。 前回は、最初にキーボーディストのジョー・ジェイムズにプロデュースを任せたのが間違いだったのよ。 彼はバンド・メンバーで、いろいろ機材を特っていたから、じゃあ一緒にアルバムを作りましょうってことになったの。 ところが、彼は誰かのプロデュースをした経験は一度もなかったのよ。 だから、彼はどうしたらいいか判らなくて、圧倒されていた。 プロデュースという仕事を全く判っていなかったのね。
R: パット・レーガンと仕事をしていると、私は安心して部屋から出られる。 パットは仕事を続けるからね。 やり過ぎることもあるんだけど、パットが曲をもっと良くしようと頑張っていることは判る。 ところが「UNDER AVIOLET MOON」でのジョーは、私達が部屋を出ると5分後にはもう彼も部屋を出ていた。 「整理したり、順番に入れ直したりとかしなくていいのか?」と訊くと、「大丈夫」と言っていたが、2ヵ月後に彼が去ったら、バックアップが何もなかった。 メモも何も残ってない。 彼はもう続けたくないと言って辞めたから、私達は残っていたテープとかコンピュータのデータ等を他の人に見て貰ったら「これは辻棲が合わない」って言うんだ。 「チェロは入ってないよ」「じゃ、ヴァイオリンは?」「それもない」って感じさ。 さらに探してみたら「ドラムしか入ってない」って言うんだ! データをきちんと残していなかったから、それを受け継いだ人達はどうすることも出来なかった。「歌なんて入ってないよ。 ドラムとベースだけだ」ってね。 だから、結局レコーディングをやり直すことになり、それはスタジオでの作業になった。 私達の音楽とは掛け離れたところだよ。あのCD制作は物凄いストレスだった。 一体どうやって仕上げたのか覚えてないくらいさ。 私は音楽を演奏するのが好きなんだ。 今だったら、出来たものをパットに任せて「散歩に行くから」って言える。そういう状態が好きなんだ。

──あのアルバムを完成させたジェフ・グリックスマンには問題はなかったのですね?
R: 彼は良かったよ。 いろいろなものを救済してくれた。 ジョーが大きな穴を作ったので、ジェフ・グリックスマンやロイ・マクドナルドは、それを修復しなくてはいけなかった。 よくやってくれたよ。私は音楽に対して忍耐力がないんだ。 さっとプレイして、終わったら飲みに行ったり、観光に出掛けたり、猫と遊んだりしたい。 コンピュータの前で作業なんて冗談じゃない! 私はEメールの出し方どころかファックスの送り方も知らないんだ。 電話にメッセージが入っていても聞かない。私にとっては重要じゃないからね。 私は、そういうものから離れているべきだと思っている。 人間を駄目にするよ、ああいうものは。

──今回のアルバム・タイトルは「FIRES AT MIDNIGHT」になるそうですが、収録曲についてコメントして頂けますか?
C: “Written ln The Stars” はロックン・ロールに近い曲よね。 RAINBOWの曲みたいな感じ。 リッチーの素晴らしいエレクトリック・ギターの演奏が入ってる。
R: 良い曲だよ。 いつも、この曲でショウを始める。観客を引き込むのにいい。 擬似ロックのような曲だから。オーガニックなヘヴィさがある。
タイトル・ソングの “Fires At Midnight” は、1415年にアルフォンス10世というスペインの王が書いたものなんだ。 それを、キャンディスが魔女についての曲に書き直した。 魔女というのはドイツのハーツ山で生まれたんだけど、ブロッケンという地域で毎年魔女の集いがあったんだよ。 この曲は半分そのことを歌った曲。
C: あなだがハーディ・ガーディやストリング・タンバリンを演奏して、私がハープを弾いた曲ね。
R: ストリング・タンバリンは変な楽器だよね。 顎の下に挟んでボローンって弾くんだけど。
C: ギターも2種類弾いてるでしょう? 中世音楽なのに途中からブルーズ調の曲に変わるのよ。
R: 私はギターでゆっくりした曲を弾くのが好きなんだ。連い曲はフレージングをする間がない。 あと、ショーンっていう古い楽器をキャンディスが使ってる。 1,000年くらい前からずっとある楽器でとても大きい音が出る。 中東から来た楽器だよ。
C: ちょっと蛇使いの笛のような感じかしら。
R: ショーンを演奏するのはとても難しい。 息が沢山必要なんだ。 ちょっとバグ・パイプに似た音で、この楽器はEのキーでしかプレイ出来ないから、総てをEでやった。 その結果、彼女は物凄く高いキーで歌うことになり、苦労したと思う。 あまり上手くはないが、私はハーディ・ガーディを演奏している。 もしギターを弾いてなかったらハーディ・ガーディを習いたい。 素晴らしい楽器だよ。アンプに繋ぐとギターより大きな音が出る。 大きな音を出すのは慣れているが、ハーディ・ガーディは本当に分厚くて大きな音が出るんだよ。 ハンドルでプレイする、キーボードみたいなもので、私はキーボードは弾かないが、ギターとの関連性はある。チューニングが大変なんだ。 天候や気温に物凄く左右されるし、部屋を移動しただけでもチューニングが狂う。 LED ZEPPELINも使っていて、中近東のハーディ・ガーディ専門のプレイヤーが弾いていたんだけど、チューニングは狂ったままだったらしい。 上手くいけば素晴らしい音が出るけど、沢山付いているストリングスの調子が合っていないと酷い音になる。

──キャンディスは前からハープを…?
C: 初めてなのよ。全くの初心者。 確かパキスタンで作られたハープだって言ってたわね。 木で出来た、装飾がいっぱいあるハープよ。 ケルト風のデザインなの。 “Fires At Midnight” を演奏出来るように特別なチューニングをして貰ったんだけど、素晴らしい音が出たわ。
R: 他に、中近東的なリフが入っている “The Storm” という曲があって…。
C: 凄く速いのよ。
R: 12弦ギターを使っていて、ちょっと難しいパートもあったけど、別に速く演奏しているわけではない。 速いというより激しい、かな。 スピードは重要じゃない。重要なのは音だ。 自分達についてのある曲を作っている時に、何となくメロディが出来ていて、最初はエレキ・ギターで録音してみたんだが、あまりにも押し付けがましかったから、アコースティック・ギターで弾いてみた。 ロックン・ロールをアコースティックでやるのは面白いよ。 自分を律しないといけないからね。

──食事の時に、本当のフランス語ではない言葉で歌っている曲についての話が出ましたが…。
R: “Mid-Winters Night” のことだね。 あれは、17世紀の伝統的なクリスマス聖歌なんだよ。 私はとても古いルネッサンス・レコ-ドを集めているんだが、その中にあるグループがこの曲をプレイしているものがあり、そのヴァージョンが気に入ったので、そのグループと同じくフランス語で歌ってみたら、とキャンディスに言ったんだ。 そう言われれば、やると判っていたからね。
C: 地方で話されるフランス語なのよね。
R: そう、純粋なフランス語ではなく、地方の言葉が混ざった歌詞で、スペイン語が少し混ざった古い言葉だと思う。 フランスとスペインの国境が出来る前の言葉だろう。 それで半分を歌っている。 で、私達にとっては冬の夜みたいに感じられる曲だったから、ある人が冬の真っ只中に眠ろうとしている曲にした。 面白いのはキャンディスが演奏しているエレクトリック・バグ・パイプ。 ドイツ産の楽器で、入手するのが非常に難しい。 吹くんじゃなくて指で叩いて演奏する。 驚くような音がするんだ。 彼女はメロディを全部担当したけど、とてもよく出来ていたよ。 勿論、彼女は前にこれを演奏したことは一度もない。 (笑)「はい、これ演奏してみて」って言うと演奏するんだ。
C: あと、ボブ・ディランのカヴァーもやったわよね。 知ってのとおり、リッチーはボブ・ディランが大好きだから…。
R: “Times They Are A-Changing”を少しルネッサンス風にしてやったんだ。 それがとても上手くいった。 BLACKMORE'S NIGHTの良いところは、私が皆をクビに出来ることと(笑)、好きな曲があればそれを録音出来ることだね。 ボブ・ディランだろうが、変な楽隊の音楽だろうがね。 何でも出来る。 チェコスロヴァキアの中世音楽でも何でも、それが好きであればいいんだ。 以前、私はそのバンドが書いたもの以外は何も録音出来ないようなバンドにいたことがあるからね。 それはとても変なことだよね。 「これは良い曲だからやろうぜ」と言っても「俺達が書かないと金が入ってこないから駄目だ」と言われるなんて馬鹿げたことだよ。 楽器を演奏するなら、何でも演奏したいじゃないか。好きな曲をやりたいよ。

──DEEP PURPLEでは“Black Sheep of The Family” を録音出来ませんでしたからね。
R: まさにそのとおり。そこから始まったんだよ。 彼らが自分達の曲以外のものをやるなんて考えられない。彼らは絶対にやらないよ。

── “Benzaiten” という曲がありますが、日本人にとっては特に興味深いですね。
R: あのリフは25年くらい前からずっと持っていたもので、メロディの部分は、1987年頃にイアン・ギランに聴いて貰ったら、非常に気に入っていた。 デイヴィッド・カヴァデールにも聴いて貰ったと思う。 だから、かなり長い間あったアイディアなんだけど、イアン・ギランやデイヴィッド・カヴァデールが歌えるようなタイプのメロディではないから、使う機会がなかった。 でもキャンディスの声だと上手くハマる。 それで、今がそのメロディを使うのにいい時だなと思ったんだ。 この曲は私達なりの、日本の人々への「ありがとう」なんだ。 少し日本風なものをやってみたいとは常に思っていたんだよ。 日本的音階が入っているものをね。 ただ、パットが何か日本の楽器をいろいろと入れ始めたんで、「待て、入れ過ぎだよ」と言って彼を止めた。 きっと日本人は、ちょっと日本風ならいいけど、度が過ぎると駄目なんだよね。

──まさにそのとおりです。
R: パットは「完全に日本風にするべきだ!」なんて張り切っていたが、私は「何となく日本風、というのがいいんだ」と説得した。 パットは納得したようには見えなかったが、結果的にはとても良いものが出来たと思う。
C: 遂に “Benzaiten” を聴いて貰えて嬉しいわ。 もう長い間、温めていたものだから。

──今回、ティルマン・スサートが書いた曲は?
C: “I Still Remember” と “Crowing of The Kings” ね。
R: スサートの書いた“Mon Ami”の一部分が“I Still Remember”に使われているんだ。 スサートは15世紀に楽譜出版に参入したオランダードイツ人の音楽家で、彼の曲をやろうなんて私達くらいだろうね。 私達は、あえてこの音楽をやりたかったんだ。何故なら、他の誰もやらないからね。 皆こういう音楽に触れるのを怖がっているようだ。 ラジオで掛からないとかバス・ドラがないとかという理由でね。 だからこそ、私達がやっていることはとても新鮮なんだ。 私達は商業的な成功のためにやっているわけではない。 人生には、有名になることより意味があることは沢山あるんだ。 人生とは自分自身であること、ただ演奏することさ。 他の人達は「あいつら、何故あんな音楽をやっているんだろう」と思っているだろう。 “Crowing of The Kings” なんて、アンチ商業主義の典型だね。 あまりに商業主義的じゃないんで、私達でさえ好きじゃないくらいだ。 (笑)

──インスト曲に関しては?
R: 2曲あって、1つは “Valdek” 。 ここからそれほど遠くないところにある、私達が好きなヴァルデック城での1日がテーマなんだ。 私にとっては、城というものの素晴らしさを思い浮かばせる曲なんだよ。木の触感というのかな。 もう1曲はマイケル・プレトリアスという、16世紀から17世紀後半に存在した作曲家が書いた “Courante” という曲。 彼の書いたメロディが気に入ったので、それを取り入れてテーマの周りを即興で作った。 とても気分が高揚する、Dメジャーの曲だ。 私の書く殆どの曲はマイナー・コードで、メランコリックだったり、シリアスでミステリアスだったりする曲が多いんだけど、この2曲のインスト曲はどちらもメジャーで、私にしては変わっている。 ちょっと軽い気晴らしのようなものさ。 音楽におけるモンティ・パイソンみたいなものだ。 明るい感じの曲と言えば、友達が―緒にパブで歌っているような雰囲気のコーラスが入った曲がありましたね?
R: “ Good To Be Back Home Again” だね。 私はアメリカに住みながら、常にヨーロッパに戻りたいと熱望している。 ハンガリー、ドイツ、ルーマニア…。奇妙なことにイギリスではないんだ。 イギリスは素晴らしいが、ドイツの方がいい。 それは、もしかしたら皆がドイツ語で話すからかもしれないな。私は言葉の人間ではないからね。 ドイツでは誰かと話さなくても済む。 アメリカでは皆が喋り過ぎるし、イギリス人は文句を言い過ぎる。 私が初めてドイツに来た時は一言も理解出来なかった。 だから話さなくていいという状況で、それはとても心地好かった。 ただ演奏すればよかった。 何か訊かれても「イギリス人だから言葉が判らない」って言えば済む。 私は静けさの中にいることが出来た。 今ではドイツ語も沢山知ってるけど、人が話しているのなんか相手にしないで、放っておかれたいっていうのはあるね。 これが私がヨーロッパを熱望する部分だな。 畑とか農家とか城とか、すぐそこにある歴史とかね。
あと、例えばドイツには居酒屋やパブがあって、人生には有名になるよりも重要なことは沢山ある。 今の私がやっている音楽は常に新鮮であり、重要だ。 自分が心から楽しめないことはやるべきではないよ。 静かに心地好く飲める。 アメリカだったらどこにでもTVがあって、スポーツを観て皆が怒鳴ったりしている。 「何でこんな所にいるんだ?」って思うよ。 ジューク・ボックスは鳴ってるし、恐ろしいよね。 だが、ヨーロッパでは静かに飲みながら考えられる場所が沢山ある。 私はそれが大好きなんだ。 “Good To Be Back Home Again” には20世紀またはそれ以前のハンガリー風な雰囲気、地域のパブに皆が集って生まれる社会の一体感っていうものを感じる。 TVもないから、煙草を吸ってお互いと話し合う。 ミュージシャンがアコーディオンを演奏していたりするんだ。 その共同体のパブで生まれる一体感の歌なんだよ。 シンプルな曲さ。海の男達がパブに入って一緒に歌う。 何回か聴けば覚えられるよね。
私にとって音楽っていうのは、シンプルであることが重要なんだ。 凄く複雑にする人達もいるけどね。 DREAM THEATERみたいに複雑になると、何が起こっているんだか判らない。 ミュージシャンの中には、複雑じゃないと上手くないって思う人がいるが、それは馬鹿げたことだ。 ゆっくりとシンプルにプレイするのは物凄く難しい。 これはエリック・クラブトンが教えてくれた。 彼のプレイを聴いた時、何で皆が彼のことをあれほど賞賛するのか判らなかった。 彼はとてもゆっくりとプレイするんだよね。 速く演奏するには練習さえすればいい。反射神経で演奏すればいいんだ。 だが、間を入れて演奏するのは難しいよ。
私にとってシンプルであることと、間を入れて音を出すことは、とても重要なんだ。 年を取るに従って、弾かない音のことを考えるようになる。 間がなくてはいけない。これは重要なことなんだ。 人々は考えて、聴いているからね。 成熟していないミュージシャンは速く演奏したがる。 こんなに速く演奏すれば上手いと思われるだろう、とね。 でも、スピードを落として感情を表現しないと意味がない。 音楽で速さを競うのは、セックスを2秒で終わらせるようなものさ。 (笑)
私も18〜19歳の頃は結構速くプレイしていたが、MOTT THE HOOPLEのメンバーに「キミはとても速いけれども、それは正当なのかね?」って訊かれたんだ。 その頃は「何言ってんだ?」って感じだったが、後でその意味が判った。 単なる練習の成果では、人は感動しないということさ。 それ以来、もっとゆっくりと弾かなければいけないと、自分に言い聞かせ続けた。 それでも、ゆっくりと弾くのは難しい。 ヴィブラートをきちんとやらなくてはいけないが、緊張してるとそれが上手くいかない。 すぐ他の音を弾きたくなるけど「それじゃ駄目だ。 弾いていたその音を、ちゃんと弾かなくちゃいけない」と言い聞かせる。
シンプルなものを書いて、その曲を人に気に入って貰うことは難しい。 私はROLLING STONESは好きではないけれども、あれ以上シンプルにはなれないよね。どの曲でもコードが3つしかない。 でも人はそれを理解することが出来るんだよ。
“Brown Sugar” でも何でもね。 この間、信じられないテクニックをやるバンドを観たんだけど、観客は「ふ一ん」っていう感じだった。 でも、ROLLING STONESだと皆が「イェー!」って大騒ぎをする。 違いは何なんだろうって思うじゃないか? それはシンプルさなんだ。 “Satisfaction” とか、これ以上シンプルな曲はないよ。
私は、1964年頃には、ギタリストのレス・ポールやウエス・モンゴメリーなんかを聴き、ただテクニック的に演奏していた。 だが、THE WHOが出てきて、「俺にも、ああいうシンプルな曲が書けるんじゃないかな」っていう気がした。 それで方向性が変わっていったんだ。 曲を書き姶めた頃は、ピート・タウンゼンドをよく聴いたよ。 実際にシンプルな曲が書けるようになるには、4〜5年は掛かったけどね。 1969〜1970年頃、DEEP PURPLEのために書いたもので、やっと良い曲が出来たんじゃないかな。 1968年にも書いたが、それは良くなかった。 1970年頃になると、自分もピート・タウンゼンドのような考え方が出来るようになっていた。 観客を一緒に巻き込めなければ演奏しても意味がないってね。 観客が理解出来なければ演奏しても意味はない。 「シンプルにしなければいけない」という発想から出てきたのが、言うまでもなく “Smoke On The Water” だ。 これ以上シンプルなものがあるだろうか? “Satisfaction” と同じさ。 あの3つ、4つの音を探すこと自体がアートなんだ。

──あなたが “シンプルさについて語り始めた時、 “Smoke on The Water” や “Black Night” のことが思い浮かびましたよ。
R: “Whole Lotta Love” とかね。

── “Paranoid” もそうですね。 まあ、BLACK SABBATH は殆どがシンプルですが。
R: トニー・アイオミも、そういうことが判っているからシンプルにしておくんだよ。 シンプルじゃないと駄目なんだ。 人は誰もがミュージシャンじゃないんだからね。 第一、何故ミュージシャンでなければいけない? 皆、9時から5時まで慟いてるんだ。 仕事が終わったら、家のテーブルに足を上げてリラックスしたいんだよ。 何かを誉め称えるような、信じられないくらい複雑なリフなんて、聴きたくないんだ。

──シンプルだけど魅力的な音楽を作るのは難しいでしょうね。
R: 難しいよ。 今度のアルバムの “All Because of You” という曲は、最初に書いた時は良いメロディだと思い、簡単に仕上がると思ったのに、何と3つもヴァージョンがある。 これだから曲を書くのは難しい。 (笑)
C: シンプルさの中の複雑さね。
R: 最初に考えだのはディスコ・ヴァージョンなんだが、パットはそれに満足していなかった。 私のギターが入ればディスコ風味も薄らぐかと思ったんだが、実際にはギターを入れる場所がなかったんだ。 (笑) ギターを入れると他の総てが上手くハマらない。 それで、別のヴァージョンをやることにした。 私のギターにバグ・パイプというアコースティック・ヴァージョン、そして軍隊のドラムを入れたロック・ヴァージョン。 これを一体どういう風にしたいのかを、これから考えなくてはいけないんだ。物凄くイライラするよ。 悪いメロディじゃないから合計にね。 パット・レーガンも苦悩している。他の曲とは異質だから。 ディスコ・ヴァージョンを聴くと笑えるよ。 マドンナがディスコ・ソングとしてリリースしたら大ヒットするだろう。 でも、私達がやるとなると、「何でこんなのやるのか」って言われるだろうね。 パットは全く違うことをイメージしていて、ロック調が合うと思っているんだ。 だが私にはロックっていうイメージはなくて、アコースティックという感じだ。 だから3つのヴァージョンが出来てしまったというわけさ。
C: あと “Waiting Just For You” っていう曲があるわね。 トランペット入りの。
R: 17世紀のトランペットのメロディなんだけど、とてもロマンティックな女の子っぽい曲なんだ。 男は嫌いだろうな、こういう曲。 女の子は凄く好きになるだろうけど。
C: 繊細な男の入だったら大丈夫よ。
R: 女の子はきっと泣くだろうな。 「この歌大好き」って言うだろう。 で、男どもは「こんな歌、嫌いだよ。 “Smoke On The Water” はどこに行ったんだ」って言う。 (笑)
C: そんなことないわよ。
R: いや、実際、いいメロディだよ。 殆どのアイディアは始まりの段階で私が出したんだが、人々はこういう感覚的なメロディを聴いて「リッチーがこんなのを作るわけない、キャンディスに違いない」って言うんだろうな。 「キャンディスにやらされてるに違いない」ってね。
C: いつも私のせいにされるのよ。 リッチーがやりたくないことを、誰かが彼に無理にやらせることは出来ないのにね。 (笑) あと、私の好きな “Hanging Tree” っていう曲があるんだけど、その話をしましょうよ。
R: あのメロディは、ギターだけでなく他の楽器でもいいが、とてもいい練習になるから好きなんだ。 ある音階のメロディをプレイするのに、1つのコード進行または2つでも出来るよね。 でも、その同じ音を違うコードでも弾くことが出来る。 そうすると全く違う効果が出る。 同じ音を使っているんだけれども、その下に違うコードを敷くんだ。
“Hanging Tree” はこういった曲の1つで、最初の部分を2つのコードで弾き、次の音…前の音と同じ音なんだけれども、それを違うコードで弾く。 これは私にとっては、とても魅力を感じる練習なんだ。 初めてこのやり方を聴いたのは、クリフ・リチャーズのバック・バンドだった SHADOWS のバンク・マーヴィンのプレイだった。 13歳頃、彼のギター・ソロを聴いでね。 最初に出できたフレーズ自体も素晴らしかったんだけど、その後、同じ音をコードを変えてプレイしたんだ。 「これはどういう意味なんだろう?」と思ったよ。 同じ音が違うコードでも弾けるのかってね。 音楽的に「これは覚えておこう」と思ったんだ。
C: “Again, Someday” のことは話せる?
R: 難しい曲を思い出したね。 …去年から今年に掛けて、私達にとってはあまり良い年じゃなかったんだ。 ペットが死んだし、私の父も数週間前に亡くなった。 勿論、誰でも自分の家族の死というものを経験するわけだが、私の猫、バンブーザが死んだ時に、彼のために何かを書きたいと思ったんだ。 でも、それほど深いものを見つけることが出来なかった。 頭の中にはいくつかメロディもあったが、彼に匹敵するような最高のものは出てこなかった。 もっとスペシャルなものじゃないとダメだ、と思ったんだ。 ハートに突き刺さるナイフのようなメロディが欲しかった。 「これだ!」というメロディが出てくるまで半年掛かったよ。 それをキャンディスに聴かせたら、彼女は何とも言えない顔をしてね。 他にメロディを聴かせた人達も何だか皆、黙ってしまうんだ。 1分半の短い曲なんだけど、愛する者を失った経験のある人の言いたいことを総て代弁してくれる曲だ。
私は “Now You're Gone” というタイトル案を持っているんだが、キャンディスは “Again, Someday” がいいと言っている。 この曲は人生の悲惨な部分を表現した曲だから、私のタイトルの方がいいと思うんだが… 人は凄く惨めになった経験がなければ幸せにはなれない。 本当の自分の姿を見るためには、深い欝の状態まで落ち込まなければいけないこともあると思う。 惨めな何かを覆い隠したくはない。正直であるべきだ。 悲惨な状態なのを隠すのは健康的じゃない。 人間は誰でも時に自分が物凄く惨めに感じるものなんだ。
社会に対する私の精神的な問題は、人は皆に嘘の顔を見せ過ぎだっていうことなんだ。 皆、笑ったり冗談を言ったりしてるけれど、心の中はハッピーじゃなかったりする。 私は幸せじゃないけど、自分の気持に嘘をついてない、正直でいる人を見る方がいい。 本当は幸せじゃないくせにただ冗談を言って、不愉快な態度を取る奴らよりいい。 幸せじゃなかったり、憂欝だったりしたら、何が自分を憂欝にさせているのか、何でそんなに不幸だと感じているのかということを、きちんと考えなくてはいけない。 不幸だと感じている時に幸福なふりをしてはいけないんだ。 私は、これについては自分なりの哲学的な見解がある。
人生に満足していない人は、見ればすぐに判る。だが、大抵ごまかしているんだ。 「大丈夫だよ」とか言って、酒を飲んだりする。 幸せじゃないんだったら「幸せじゃない」って言えばいいじゃないか。何故、幸せなふりをするのか。 汚い物をテーブルの下に押し込むと、後でそれを掃除しなくてはいけなくなる。 それは簡単なことじゃないよ。

──今回のレコーディングに参加したミュージシャンについて教えて頂きたいのですが…。
R: 全員クビにしたんだ、フフフフフフ。 でも、同じミュージシャンと1年半も一緒に仕事してきたんだから、結構いいことだよね。 あれ、1年だっけ? 2ヵ月?(笑)
私達は、私達のやっている音楽と波長が合う人で、最高なミュージシャンを見つけようとしているだけだ。だが、それが難しいんだよね。 これを始めた時、この音楽はとてもシンプルだから、誰でもプレイ出来るだろうって思った。 でも、次第にバンドの中で “出来る人” と “出来ない人” がはっきりしてきたんだよね。 その経験から判ったことは、この音楽をプレイするにはある程度その人が洗練されていなくちゃ駄目だということ。 とてもデリケートな部分がある音楽だから、ただドラムをガンガン叩くわけにはいかない。 今に至っては、良いメンバーが揃ってきたけどね。
C: 始めた時には、総て間違ったものを求めていたわね。
R: アコースティック・ギターをプレイする人が2〜3人いればいいと思っていたんだけど、ロックン・ロールのバンドを作るより、もっともっと大変だった。 ロックン・ロールのバンドは「レザー・パンツ穿ける?」「はい」「沢山飲める?」「はい」で決まりだからね。 (笑)
C: ポーズを取れるのも重要よね。 (笑)
R: しかし、今の私達には感覚的にピッタリくるミュージシャンが必要だ。 それにしても、ドラムを凄く軽く叩くことは出来るかとか、ベースを弾く時に微妙な強弱を付けることが出来るのかとか、そんなことがそれほど難しいとは思わなかったよ。
C: あと、ツアーで一緒にやっていける人じゃないと駄目ね。
R: 初めて日本に行った時に、到着してすぐに帰りたくなった女の子がいたんだ。 (笑) 着いて24時間以内にホームシックだよ。 子供がいて、いつも外に出たがっていたから、飲みに連れて行ってあげようとしたら「えっ、家に帰れるの?」って感じだった。 自分の家、よく知っている場所ではとても安定しているのに、ツアーに連れて行くと不安定になる人がいるっていうのは面白いよね。 ドラッグとかやっていたり、他に変なことをやっていたりするとツアーに連れて行った時にどういう風になるか判らないからね。
C: 私にとってはツアーはとても楽しいのに、些細なことで耐えられないと思う人がいるのよ。
R: 例えば、RAINBOWに抜擢した時には友達の家の床に寝ていたドゥギー・ホワイト彼はツアー先の五つ星のホテルのレセプションで、部屋の鍵がどうのこうのとか言って、部屋を変えてくれって文句を言っているんだ。 ツアーが終わったら友達の家の床に寝る奴がだよ。 (笑) あるいは、このバンドのメンバーで言うと、ヴェジタリアンの女の子がいて、別にヴェジタリアンであることは構わないんだが、こういう魚じゃなきゃいけないとか、ああいう野菜じゃなきゃいけないとか、もう大変だった。 ツアー中なんて、食べられる時に食べられる物を食べなくちゃならないものだ。 それなのに彼女は食べ物に関して非常にうるさい。 ただでさえ7人もメンバーがいれば、その7人で楽しむっていうのは本当に難しいよね。 誰かがいつも不機嫌だから。 「あらトウフがないのね」とか、何かいつも上手くいかないことがある。
彼らは、バンドというものに入ると人が変わってしまうみたいだね。 何故そうなるのか私には未だに理解出来ないのだが。 RAINBOWでも、バンドに入って来た時は「僕はただのキーボード・プレイヤーだ」と言って非常に謙遜した態度だった奴が、6ヵ月も経つと「オレが王様だ」っていう風になった。突然、態度が変わるんだ。 そうすると「ああ、そう。さようなら」だよね。 絶対にいて貰わないと困るというわけではないんだから。 パットから聞いたんだけど、彼が一緒にやってきたバンドは皆お互いに嫌い合っていたらしい。 でもバンドの名前があるから我慢するんだよ。 別々のホテルに行って別の生活をする。 私が思うに、もし誰かと上手くいかないのなら、その関係はそこでストップすべきだよ。
例えばDEEP PURPLEでも、互いに好きではないメンバーがいたのを知っている。 お互いが、お互いを実は嫌っている。 でも、安定感が欲しいためにバンドに属しているんだよね。 安定感が欲しいためにバンドをやってる人間は沢山いると思うよ。だが、私は安定なんて信じない。 人生で幸せだと思えないことがあれば、もう止めなければ。 「でも、このグループを辞めたら安定がなくなってしまう」なんて思ったら駄目だ。 安定するだけのために何かをして、それを嫌うなんて意味がないよ。そんなバンドなら沢山知ってるけどね。 名前があるからっていうことで一緒にいなくちゃいけないんだ。 その名前が物凄く大きければ、まだいいのかもしれないけど、私達は音楽を純粋に楽しもうとしているんだ。 「BLACKMORE'S NIGHTにいるとお金が貰えるからいるんだ」っていうのには巻き込まれたくない。そういうのが見えると、駄目だね。

──レコーディングの音は残したけれども去って行ったミュージシャンというのもいるのですか?
C: そんなことはないわよ。 今回のアルバムでプレイしている人は皆ツアーにも一緒に出るわ。
R: 私はレコーディングにバンドを参加させるのが好きだからね。 私はミュージシャンに非常に親しみを覚えるのさ。 ミュージシャンは皆、見下されているものなんだ。本当だよ。殆どの人からね。 マネージャー、弁護士、レコード会社の人達とか…。最低な生き方だと思われてるんだ。
C: ミュージシャンがいなければ、彼らはお金を稼ぐことが出来ないのに。
R: だから、私はなるべくバンドの皆と一緒にいるようにするんだ。 でも不思議なのは、いつもは私達2人だけでっていうことが多いから、あえてキャンディスと私がグループ写真を撮ろうっていうと、メンバーの誰かが「ちょっと気に人らないことがある」とか言うんだ。 そうすると「さようなら」ってことになってしまう。 何でミュージシャンをもっと参加させようとすると、彼らは自分でコントロールしたくなるんだろうね。
だが、今いるメンバー達はとてもいいよ。 レコードにも彼らは参加させようと思っている。 パットは優れたミュージシャンで、チェロでもトランペットでも何でも出来る。 そして私がキャンディスとアイディアを出せばそれで済むから、本来は私達3人いれば、他のミュージシャンはレコーディングには必要ないんだよね。 でもあえて私達のバンドを参加させたいと思っている。
若い頃、私は皆が対等であるようなバンドにいたいと思っていた。 バンドのリーダーであるのはとても気まずい感じがしたよ。 私の性分に反しているからね。 私は内向的だから、バンドのスポークスマンにはなりたくないんだが、その役を押し付けられるんだ。 インタビューを受けるよりは、ただプレイしていたほうがいい。 このインタビューは違うけどね。 カズが私をリスペクトしているということが判っているから。 だが、私達のことをよく知らないアメリカ人のインタビューを受けたりするのは最悪だよ。 ここにいたくない、ただプレイしていたい…と思ってしまう。 私はセールスマンではないんだ。それが得意な人もいるよ。 「これを買いましょう、これが一番」って言える人。 でも、私はその全く反対だから…。
C: パフォーマーとアーティストの違いね。 パフォーマーはとても外向的で、テーブルの上に乗ったりするじゃない。 デイヴィッド・リー・ロスみたいに。 (笑)
R: そもそも、私が音楽を姶めだのは、とてもシャイだったからだ。 学校で、誰とも話したいと思わなかったから、ギターを始めたんだ。 自分を表現する方法としてね。 でも、今は「ショウに出てください」って言われて「何のショウ?」って訊くと、トーク・ショウだって言う。 喋りたくなんかないよ、政治家じゃないんだから。 しかし、今やミュージシャンだから喋らなきゃいけないっていう風潮になってきているんだね。 ブライアン・メイのような静かで真面目なミュージシャンは、喋りたくなんかないんだよ。プレイしたいんだ。

──今バンドにいるミュージシャンの名前を教えて頂けますか?
C: カーマイン・ジグリオがいるわね。
R: 彼はイタリア人だ。 何が期待出来る?
C: 何が期待出来るって(笑) 彼が私達のキーボード・プレイヤー。 あと、ドラマーのマイク・ソレンティーノ。
R: 彼は上手いよ。
C: あとはボブ。 またの名をノルマンディのサー・ロバート。 (笑) ギタリストで、ベース・プレイヤーとしても素晴らしいのよ。 ただ、私達は彼の本名が何だか知らないの。 (笑)
R: だから今ではノルマンディのサー・ロバートって呼ぶことにしているんだ。 彼はとても頭が良くて、素晴らしいプレイヤーだ。 あと、クリス・ディヴァインという、何でも弾ける男がいる。 彼はマンドリン、ヴァイオリン、ヴィオラ、フルート、リコーダー、トランペット、キーボードと、とにかく何でも出来る。 そしてヴォーカルのマーシー・ゲラー。彼女は素晴らしい。

──レコーディングはスケジュールどおりに進んでいると考えていいのですか?
R: パットと仕事をしてスケジュールどおりになることはまずないね。 (笑) 彼は自分の部屋に篭って、ある音を練って練って練り続ける。 「他の曲やろうぜ、もう1年同じものをやっているじゃないか」という感じさ。 (笑) 完璧以上にしたいんだよ。 1,000年後に火星人が見つけた時に「これは完璧だったね」って言って貰いたいんだ。 私も変わっているが、彼はもっと変わっているよ。
C: でも期限があるから、ちゃんとスケジュールどおりに終わるわよ。ツアーもあるし。 今回は結構面白いところに行くのよ。 今まで行ったことのない、イスラエルやトルコ…
R: 戦争があるところは総て廻る。
C: そうね。 (笑)
R: ハンガリー、ロシア、スカンジナヴィア…。 このバンドを初めて作った時にやりたかったのは、小さい所でプレイしてバンドを整えて、CDをいくつか作るというものだった。 今、私達は3枚目のアルバムだが、少し洗練されてきたね。 あまりツアーをし過ぎるのは好きじゃない。 DEEP PURPLEの時はあまりに多くて、何かの刑罰のようだった。 あまりにも沢山ツアーをやったから、結果的にツアーが嫌になったんだ。 私は毎晩慟くのがいいとは思わない。 一晩やったら一晩休んで、もう一晩やったら二晩休んでっていうのがいい。 楽しまなければ音楽でなくなってしまう。 昔の私は、あまりにも疲れていたので、伺をプレイしているか考えられないぐらいだったよ。 本当に疲れていた。そしていつも病気になってしまったんだ。 RAINBOWでも仕事量が多かった。 マネージメントが電話を取って「ナイロビ? ああ、行く行く」って言うのは簡単だ。 彼はギャラの10%を受け取ってナイロビに行かなくてもいいが、バンドは行かなくちゃいけないからね。
そう言えばイングヴェイ(マルムスティーン)のツアー日程は信じられなかったね。 3ヵ月間、毎晩ショウがあって、その後は10日毎に休みがある。 それもヨーロッパからアメリカに行ったりしてだよ。 一体どうやったらそんなことが出来るのか判らない。 どうやったら毎日移動して、プレイして、あんなに飲むことが出来るんだと思ったね。
C: だから出来るのよ。 (笑)
R: イングヴェイが飲むのが好きなことは知ってるよ。だが、彼は本当に気をつけるべきだ。 無理をし過ぎてる。 今の彼のマネージャーが誰だか知らないけど。 ジム・ルイスはもういないよね?

──ええ、別のマネージャーが付きました。
R: そうか、それはよかった。 彼の家族がマネージャーならいいんだが。 (笑) マネージャーっていうのは、家族でもない限り、アーティストを殺すからね。 仕事をすればするほど、彼らには余計に金が入るんだから。 このツアーをやって欲しい、あのツアーをやって欲しいって言われても、断わるべき時は断わらないと。 いいペースで廻らなくではならない。 ある街へ行って演奏して、それで落ち着いてその街を見たい。それから次へ行く。 こういうやり方だと観客に100%与えることが出来るんだ。新鮮だからね。 疲れきっていると、例えばRAINBOWやDEEP PURPLEの時のように、ステージ上で自分が何を弾いているのか判らない時もあった。 あまりにも疲れていて、ただ眠りたかったんだ。 飛行機に乗って、電車に乗って、仕事、仕事なんて続けられないからね。 このバンドでは3週間以上続くともう止めるんだ。
C: 日本にも11月頃には行きたいわね。
R: 日本の人達は私達に来てほしいと思っているのかな? よく、いろいろな人がうちのオフィスに電話しできて、「リッチーは何であんなに長い間日本でビッグでいられるんだ?」って質問していたことがあっだらしいけど…。 いずれにしても、数週間のツアーならDEEP PURPLEもいいね。 メンバーと飲みながら話せば「やろう」となるよ。 だがブルース・ペインが関わっている限り不可能だ。 日本の問題は、そこに行くまでが大変だっていうことだよね。 飛行機の中で風邪を引いている人と同じ空気を12時間も吸っていなくちゃいけないということ。 もし日本に1時間で行けるなら、もっと頻繁に行くのにね。 私は移動をするのが大嫌いなんだ。 5時間以上の移動は総て地獄みたいだと思うね。 君も行ったり来たりしてるけど、一体どうしたらそんなことが出来るのか判らないよ。

──今はツアー・スケジュールも含め、ビジネス的な面でも総て自分でコントロール出来て、非常に快適な状態なのでしょうね? 先ほど話に出たイングヴェイも、今はかなり自分の意志をビジネスに反映しているようですが…
R: 私には、私にとって最適なマネージャーが付いているからね。 個人的な見解を言えば、何でイングヴェイがジム・ルイスといたのか判らない。 彼は典型的なタイプだ。 何だって彼はあんな奴と一緒に…と思うけど、考えてみれば私だってブルース・ペインと一緒にいたんだからね。 馬鹿げたことに巻き込まれることはあるよ。
C: 本当に気をつけないと、何年も騙され続けて、ミュージシャンには判らないっていうことがあるらしいから。 ある日、気がついてみると、業界に居場所がなかったり、プレイしたくなくなったりして、引退した時のために貯めていたお金もなくなっていたりするのよ。 それで、何もしないで電話を掛けていただけの人間が1人でお金を全部持っていたりするのよ。それは酷いことだわ。 そういう経験をしている人は凄く多いのよね。
R: ある人間がミュージシャンで、クリエイティヴで、音楽に集中していたら、ペーパーワークを追っていられないんだ。 そして、マネージャーは「さあ、お金をちょっとあげよう、残りは俺が持っていてやるよ」と言い、「ああ、それはいいね」と言ってミュージシャンは曲を書き、ツアーをして、バンドを調整してると、マネージャーが何をしているかなんて見ることが出来ないんだよ。
C: 例えばリッチーの前のマネージメントの『Legend』のジョー・ボーイランドとジャニス・ローグ。 リッチーはつい最近、彼ら相手の訴訟に勝ったのよ。 でも、自分が正しくて相手が悪いと判っていて、告訴するために裁判に持っていっても、弁護士に物凄く沢山お金を払わなくてはならない。 1年くらい掛かるんだけど、その間、弁護士がお金を儲けているのよね。
R: 『Legend』との訴訟が終わったから、これからDEEP PURPLEのブルース・ペインを訴えようと思っている。 私個人は、ファンのために1〜2週間くらいDEEP PURPLEをやっても構わないと思っている。金のためではなく、楽しむためにね。 でも、それをやらない主な理由は、マネージャーだよ。 もうあのマネージメントとは関わりを持ちたくない。それを彼らは知っているんだ。 ファンが本来のDEEP PURPLEを観たいっていうんだったら1〜2週間はやるよ。 ノスタルジーのためにね。 バンドのメンバーは、いつも結構お互いの悪口を言っているけれども、ちょっと飲めば「やあ、どうしてる?」っていう感じでOKなんだ。 しかし、マネージャーは絶対に許せない。 その点はとてもはっきりしている。 ブルース・ペインが関わっていることに参加することはあり得ないってね。
今はブルース・ペイン自身が参加出来なくなることが判っているから、そういったイベントを企画したりはしない。 仲間外れにされるのは判っているからね。でも、それはとんでもないことだよ。 例えば、BEATLESのファンだったら一晩だけBEATLESが観たいと思うかもしれない。 私がファンだったら「BEATLESが観られないのはマネージメントのせい?」「それはどういうことだ?」「彼らは誰?」「彼らは何者でもないじゃないか」って思うね。 でもマネージャーは、ある状況を上手く操るんだ。 何故なら、彼らがエージェントとかプロモーターと話をするからね。 もし、この先イアン・ペイスかジョン・ロードと話したら、何日かやろうという話になるかもしれない。 だが、ブルース・ペインのことは忘れられないね。 彼らはきっと「ああ、やろうよ」って言う。 そうしたらブルース・ペインは完全に怒るだろうな。
私は、このバンドで今やっていることが、やりたいことだ。 でも、もしファンがDEEP PURPLEを聴きたいっていうんだったら、スタジオには絶対に入らないが、1〜2週間楽しむためにライヴをやるのはいいと思う。 “Highway Star” をプレイして、25年前にちょっと戻ってみるんだ。 でも、やりたくても、バンドに全然関係ない奴のために出来ないのは残念だよね。 これは凄くおかしい話じゃないか? バンド自体は久しぶりに会ってビールを何杯か飲めば盛り上がる。 じゃあ3〜4日やろう、いいねっていうことになるだろう。 でもマネージメントは「リッチーが私に参加してほしくないと思ってるから、私も彼には参加してほしくない」って言うはずだ。 でも本来こういうことは音楽とは全く関係のないことなんだ。
C: 私達の仕事をしてくれているキャロルの素晴らしいところは、彼女が物凄く熱心だっていうこと。 朝4時でも、午後4時でも慟いていて、殆ど寝ていないことが多いのよ。
R: そして、彼女はとても正直なんだ。 多くの人が彼女に「BLACKMORE'S NIGHTを寄越してくれればあなたにお金を出そう」と言ってくる。 でも彼女はそこで「駄目。 それは公正じゃないわ、彼らはアーティストなのよ」って言う。 人は彼女のことを理解出来ないようだよ。 「何でアーティストの側に立つのか」ってね。 彼女はマネージャーじゃなくて、私達を代表してくれる人だ。 私は彼女にマネージメント・フィーなんて払わない。 10%なんて払わないよ。 毎週少ない給料を払っているだけだよ。 でも彼女は私が今まで持ったマネージャーの誰よりも100%いい。 彼女の誠実な仕事によって、このバンドの支持者は確実に増えている。それも、非常に幅広い年齢層だ。 3歳から12歳、そして25歳から75歳という、2つの年齢層に分かれるんだよね。 “怒れる若者達” は私達がやっていることにはあまり興味は示さない。
私達を追ってくる入っていうのは…こういう言い方はしたくないけれども、より教養があって洗練されている。 普通のことよりもう少し上のものを探している人達なんだ。 「ロックしたいかー!?」っていう人達とは少し違う何かを求めているよね。 こういう音楽で、静かなものを弾く時には、上手く弾かなければいけない。 私にとって、それはチャレンジなんだ。 DEEP PURPLEの頃は、ステージで決まりきったプレイを繰り返していて「これは馬鹿でも出来るな」と思っていた。 次の曲にいってもまた同じことで、じゃあ次の6分はこれね、みたいな繰り返し。 それで、私は人生で何か欠けているものがあると思った。 私の周囲には私の音楽で金を儲けてる人が大勢いて、総てが腹立たしかった。元々は、ただ演奏したかったのに。
今のライヴは、とても軽い音楽を演奏して、キャンディスが軽やかな音楽を歌っていて、何百人かを相手にしているだけなんだけれども、DEEP PURPLEで何万人を相手にするより、もっと意味がある。 そのうえ、上手くプレイ出来ないと駄目なんだ。 会場を見回したりポーズを取ったりして「俺はロックン・ローラーだぜ!」なんて言うことは出来ないからね。 ちゃんとプレイしなくちゃいけない。 だから、今は自分をテストしている状態と言えるかもしれない。 昔は神経を苛立たせていた時も多かった。 でも今は、いつもギターを手に取っている。 10年前はギター以外のことだったら何でもやったね。サッカーとか。 ギターをアンプに入れて音を出すのはもうウンザリだった。 そんなことを30年もやっていると、疲れるんだよ。
アコースティックでは大きい音でごまかすわけにはいかないから「練習しなくちゃ」と思う。 だって60歳とか70歳くらいの人が「プレイ出来るのか?」って私のことを観ているんだから。 18歳くらいの集まりでスモークとライトがあればいいっていうのとは違うんだ。 音があって酒を飲めばいいというのとは達う。 演奏出来るかっていうことだからね。今はギターが大好きになった。 12年前はそうは思えなかったな。
C: 新しい世界が開いているっていうことじゃないかしら。 今のあなたのプレイからは、新しいインスピレーションが聞こえてくるわよね。
R: 今の私達の音楽世界は、DEEP PURPLEの巨大なロック・ビジネスとは異なる、小さくて親密な世界だよね。 私は特に500人ぐらいの観客相手に演奏するのが好きなんだけど。 100人でも、50人でも、20人でもいいね。 DEEP PURPLE が“Smoke On The Water” を20人を相手に演奏するのって想像出来るかい? これは上手くいかないよ!(笑) 2万人が「イェー!」って言わないと盛り上がらない曲だからね。 20人の人に、あのリフを聴かせたら、あれがいかに浅いものかっていうのが判ってしまうんだ。 あまりにも意味がないということがね。 勿論、今やっていることと同じくらい、あの曲、あの時代に誇りを持っているけれども…。
C: でも、それはあなたの人生における別の時代だったのよね。
R: 私が言いたいのは、今の私がやっている音楽は、たった2〜3人の人だけにでも演奏が出来るということなんだ。それでもいい音楽なんだよ。 ところが昔のDEEP PURPLEの音楽っていうのは、互いにヒステリックになり、興奮する人達の前で演奏しなくてはならなかった。 10人や20人だけに演奏するんじゃ駄目だったんだ。 KISSのようなものだよね。 私はKISSを私なりに尊敬しているけれども、音楽は必ずしもベストじゃない。 でも2万人の観客を相手に、火や爆発音やライトを駆使し、血を吐いて舌をベロッと出す、あのショウを皆が素晴らしいって言っているよ。 だが、KISSを15人の前に出したら、どうだろう。 ライトも何もなし。そうなると何の魅力もないだろう。
私も、DEEP PURPLEにいた時に自分をそう感じだんだよ。 上手くいっていて、観客は満足していても、自分が恥ずかしかった。 決まりきった古臭いことの繰り返しで、新鮮さがない。 バンドを振り返って「今の音楽はいい。 バンドもいい」と思いつつ、何か腑に落ちない感じがしてね。 どこかがおかしいと思っていた。 それでも、他の人達はとてもハッピーだったよ。 観客は手を叩いているし、場内は満員、そして金は沢山儲かったからね。 万事が素晴らしいじゃないかっていうことなんだけど、肝心の音楽の方はどうなったのかって私は思ったのさ。 だが、今の音楽をやっていれば、私は新鮮さを感じていられる。 ステージでただプレイするだけではなく、常に上手くプレイしなければならないからね。

──先日、ロニー・ジェイムス・ディオが DEEP PURPLE のオーケストラとのショウのゲストとして来日しました。 先ほど、あなたはブルース・ペインの話をされましたが…
R: カズの言いたいことは判るよ。 ロニーがブルース・ペインと仕事をしていることには私も非常に驚いたよ。 ロニーは、私以上にブルース・ペインのことが大嫌いなはずだからね。 だから、何でそんなことをしているのか判らない。 お金のためにやっているかもしれないし、純粋にDEEP PURPLEへの敬意なのかもしれない。

──今回、日本でロニーにインタビューをした時、「またリッチー・ブラックモアと一緒のステージに立ってくれることがファンの夢だけれども、その可能性はありますか?」と訊いたんです。ロニーは「私は常にリッチーから話が来るのを待っていた。だが、リッチーは今、自分のやっている音楽に満足しているようだから…」と言っていました。そしてインタビューが終わり、ロニーが「次の大きな仕事は何たい?」と僕に訊いたので、「リッチーに取材します」と答えると、「彼はどこにいるの?」と訊かれました。「ドイツです」と言うと「ああ、レコーディングをしているのかな。リッチーはドイツが大好きだからね。彼に宜しく伝えてくれ」と言っていました。
BLACKMORE'S NIGHTの新作を完成させようというあなたにする質問としては失礼かもしれませんが、ファンとして訊かせてください。 この先、あなたは誰か新たな男性ロック・ヴオーカリストを見つけてRAINBOWをやるとか、別のロック・バンドをやる可能性はありますか?

R: いや、今はない。 今やっている音楽に入り込んでいるからね。 さっき話したように、ロニーと1〜2週間の仕事ならしてもいいし、DEEP PURPLEと1〜2週間仕事をするのもいいけれど、それはファンのため、そして自分のためだ。 「昔を振り返って一緒に飲もうぜ」というようなニュアンスだよ。 でも、ロック・バンドでスタジオ入りするつもりはない。それは意味のないことだ。 今やっている音楽は、私自身の延長だからね。 ロックではなく、もっと静かな音楽だが、自分が今これをやっていることに満足している。
キャンディスに「これからファンのためにDEEP PURPLEとちょっとしたツアーをやるから、2週間ぐらい時間を取るよ」って言うのは悪くないと思うよ。 そこにロニーを放り込んで、RAINBOWの曲をやるのもいい。 ファンにはそれを観る権利があるんだよ。 ブルース・ペインと仕事をしないで済む限り、そしてスタジオに入らない限り、それもいいと思うよ。本気で楽しもうと思える。 私は面白いと感じるだろうし、それがファンにとっても面白いといいね。 100年前を振り返って(笑) 懐かしみ、楽しむのさ。
今、私がやっている音楽は、面白いという種類のものではなく、満足感を得られるものなんだよ。 単なる楽しみに比べて、もっと価値の高いものだ。 勿論、人は「彼は何であんなに静かに弾いているんだ」って言うだろう。 しかし、これが私のやりたいことなんだ。 正直言って、自分を最優先に考えているんだよね。 そして、次にファンが欲しいもの。 私のやりたいこととファンのやりたいことが一致したら素晴らしいと思うが、ファンに支配されているわけではない。 そして、金に支配されていないのも喜ばしいことだな。 また、安定にも支配されていない。 要するに、私は他の皆とは少し達うんだ。
やりたいことを続けるために少しお金があることは素晴らしいよ。 やりたいことのために家を売る必要はないけど、少ない観客を相手にしていたいんだ。 プロモーターが大きな会場でやれと言うんだけど、せいぜい2,000人くらいにしておこうって言うんだ。 時々、ロシアとかトルコで演奏すると、5,000人収容のところでやってくれと言われる。だが、それは私達の音楽とは達うからね。 私達の音楽はとてもデリケートなんだ。
きっと、いつか自分でロニーに電話すると思うよ。 そして、ジョン・ロードやイアン・ペイスにも電話を掛けて、数週間ファンのために何かやろうよって言うかもしれない。 イアン・ギランのことだって、そんなに問題ではないよ。 2週間くらいなら我慢出来る。 ただ、私は彼と喋らないだけだ。 彼は悪い人間じゃないけれども、意見が合わないからね。 しかしブルース・ペインとは一緒に仕事は出来ない。それは不可能だ。 ロニーのマネージャーは未だにウェンディ・ディオなんだよね? 私は、彼女のせいでロニーと駄目になったんだと思っている。 それを彼女は判っていると思うよ。だが、ロニーには彼女が必要なんだ。
……そうだね、ジョンとイアンとロニーに電話をしなくちゃいけないな。 いつか、何かをやるかもしれないけれど、安定したものではないよ。 実際のところ、以前ロニーとは手紙の交換をしていて、何かをやるかもしれないという段階で、ウェンディが先走ってそれを進めようとしたんだ。 『Polydor』に行って大きな契約の話をし始めた。 あの時は、それが私の神経を逆撫でしたのだが、やはり一度は、オリジナルのRAINBOWをやって、ファンを満足させるべきかもしれないね。 そうすれば、その後で私達は各々お互いに好きなことをやることが出来るから…■■

※このインタビューの続きは来月号に掲載しますので、お楽しみに!